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ジオパーク :調査研究助成

令和6年度おおいた姫島ジオパーク調査研究活動助成 研究成果

公開日:2025年4月1日 最終更新日:2025年4月24日

姫島に分布する地質遺産の三次元点群データベースの構築と利活用に関する研究

池見 洋明・豊本 照仁・大口 峻央(日本文理大学工学部)

おおいた姫島ジオパークの貴重な地質遺産を守り、活用するために、3D計測技術を用いた保存・教育支援の研究を行いました。高精度なFARO Focus3Dを用いて、黒曜石産地やコンボリュートラミナ露頭の詳細な3Dデータを取得し、地形の変化を記録・分析しました。さらに、iPhone-LiDARやドローンで撮影したデータをSketchfabに登録し、教育・研究資源として活用可能にしました。これにより、自然災害による影響の可視化や、ジオツーリズムの促進が期待されます。今後も定期的な3D測量を行い、地質遺産の保全や地域振興に貢献していきます。

 

おおいた姫島ジオパークにおける持続可能な観光映像の研究

松原 かおり・研究ゼミナール学生 13名・中尾 佳奈(日本文理大学情報メディア学科)

本研究は、おおいた姫島ジオパークにおける特続可能な観光の促進を目的とし、観光映像の制作を通じて地域の魅力を発信する取り組みである。人口減少が進む中、姫島村では若者の関わりや関係人口の増加が地域の活力を生む鍵となると考えられる。そこで、本研究では松原研究室の学生が地域資源を調査し、住民と交流しながら「姫島の自然や文化の魅力」「人と人のつながり」をテーマに2本の観光映像を制作した。完成した映像は「日本国際観光映像祭」に応募し、国内外へ発信する機会を得た。また、映像を紹介するパンフレットも制作し、地域内外での周知を図った。本研究を通じて、持続可能な観光映像の可能性を探り、地域活性化に貢献することを目指している。今後は、持続可能な観光映像としての映像表現方法についても研究を続け、検証していきたい。

 

“火山が生み出した神秘の島”姫島におけるインバウンド誘致の可能性

寺田 謙太朗・ジョーンズ トマス(立命館アジア太平洋大学)

本研究では、大分県姫島村におけるインバウンド観光の可能性について考察し、特に「おおいた姫島ジオパーク」を活用した観光振興の波及効果を分析した。姫島は火山活動によって形成された独自の地形と豊かな自然環境を有し、黒曜石や断層などの地質資源が観光資源としての価値を持つ。調査では国内外の観光動態を踏まえ、訪日外国人旅行者のニーズを分析し、持続可能な観光の実現に向けた戦略を検討した。その結果、ジオツーリズムや文化体験プログラムの充実、地域産業との連携、SNSを活用した情報発信の強化が、インバウンド誘致の鍵となることが明らかになった。本研究は、姫島の観光発展に向けた実践的な提言を行い、地域活性化に貢献することを目的とする。

 

おおいた姫島ジオパークにおけるユニバーサルツーリズム推進の可能性の検討

波名城 翔(琉球大学)

観光立国推進基本法においてユニバーサルツーリズムの取り組みを推進することが明記されたことや人口減少による国内観光客需要が減少する中で新たな層の顧客確保として高齢者層が障がい者等が重要であることから、本研究ではおおいた姫島ジオパークのユニバーサルツーリズム推進の可能性として研究を実施した。
公共施設等のバリアフリー化はされているが、伊美港までのアクセスや島内移動の難しさから訪れるハードルが高く、更に宿泊施設の状況などから多くが通過型の観光であると考えられた。
今後はアクセスの改善やVRの活用(行くのが困難な場所の疑似体験)、介護研修や障害理解に関する研修や宿泊施設への改修費用の助成などを行い整備することで「誰にでも優しいジオパーク」として地域振興が進むことが期待される。

 

姫島島内地下水の溶存 CO2分布調査

山田 誠(龍谷大学経済学部)・藤井 賢彦(東京大学大気海洋研究所)・渡邊 裕美子(京都大学大学院理学研究科)

姫島島内のさまざまな場所の地下水を採取し、主要溶存成分と水の安定同位体比から島内地下水の水質の特徴と、島内地下水における溶存炭酸の分布特性について明らかにした。島内では人家の多いところであればかなりの密度で井戸が存在しており、そのほとんどは深さ数m程度の浅井戸で、これらの地下水は、島に降った雨が比較的短時間に地下に浸透し、それが流動し局所的な影響を受けて水質を形成していることが示唆された。また、島内の地下水の水質は均一ではなく、狭いエリアに多様な溶存成分構成の地下水が存在していることが明らかとなった。炭酸水素イオン濃度も場所によって大きく異なり、局所的に炭酸水素イオン濃度の高い地下水が存在することが明らかとなった。

  

近現代における姫島の地理学的研究~戦史研究の視点から

松島 文子・安井 翔・織田 祐輔(おおいた水辺の史談会準備会)

[戦史研究的成果]
本年度の成果の一つは姫島村の戦没者について、国立公文書館の「海軍戦没者履歴原票」の分析を試みた、大分県で最初の報告である。
『姫島村史』に記載のある戦没者の一覧表によると戦没者の総数は計 166名であり、その内訳は日露戦争5名、日中戦争18名、太平洋戦争143名となる。また大分縣護国神社所蔵の「祭神名簿」には103名の記載がある。これは、昭和30年代に大分県遺族連合会傘下の各遺族会がご遺族の協力を得て独自にまとめたものであり、その性格上全ての戦没者を網羅したものではない。
履歴票は遺族年金や慰霊金等のベースになっていたもので戦没者がどの部隊に所属しており、どこでどのように亡くなったのかを記録した巨大なデータである。戦没時に本籍地を置いていた都道府県毎にまとめられており、924箱に分けて収められている。このうち、戦没時の本籍地が大分県であった者の履歴票は15箱に分けられており、うち8箱は閲覧可能となっている。その8箱に収められた履歴票の総数は4,398名分であり、戦没時の本籍地が姫島村であった者を30名確認することができた。
連合軍の大規模かつ本格的な反攻が開始されたことを背景に、アジア太平洋の各地で日本軍の全滅や敗退が相次ぐようになった昭和19年以降、姫島村での戦没者が集中していることが分かった。
[ジオパーク関連]
姫島は古くより黒曜石の産地であったが、真珠岩(perliteパーライト)の産出地であったことはあまり知られていない。近現代の一定期間、宇部興産、三菱、太平洋セメントなどの企業が土地を所有していた。千人堂近くには宇部興産の「境界柱」が多数残っており、北浦にはパーライトの積み込み設備があった。
矢筈岳の登山ルート沿いに戦時中の「壕」と思しき横穴が5つ以上あり、登山アプリYAMAPにおいても登山者がスポット写真を撮影しており注目を集めている。

  

姫島火山群の溶岩のカリウム-アルゴン年代測定

宮﨑 亜依・三好 雅也・平川 玄・佐賀 涼一・間 直哉(福岡大学)

姫島火山群のうち、大海火山の貫入岩試料、金火山および稲積火山の溶岩試料を対象にカリウム-アルゴン年代測定(石基を対象とした感度法)を行った。
大海火山の試料からは約8万年前、金火山の試料からは約7万年前の年代値が得られた。稲積火山の試料は大気混入率が高く、良い年代値が得られなかった。
大海火山の試料の年代値は金火山の試料の年代値よりも古い。このことは、大海火山が姫島火山群の中で初期の山体であるという、先行研究の火山地質学的研究に基づく提案と矛盾しない。
今後さらに矢筈岳火山、達磨山火山、城山火山の溶岩試料についても年代測定を行い、火山活動史に年代値を刻むことで姫島火山群の成り立ちの解像度を向上させる。