姫島へのUIJターンによる移住者は、 自分自身や家族が良く生きていくことが、 移住のきっかけになっている。 移住後に、 島外の方のワーケーションやエコカーなどをとおして、自律的に地域課題解決に関わることができていることが、 地域への定着の大きな要因となっている。 また、地域に定着後、 移住者が自律的に関係案内人となり、地域住民と協働で、おおいた姫島ジオパークの観光やまちづくりに深く関与しながら、自然体で何気無いコミュニケーションを行うことで関係人口創出に大きく貢献していることを参与観察などで確認した。 つまり、 おおいた姫島ジオパークでは、住民そのものが、ワーケーションや関係人口創出の重要な地域資源となっている。
この研究は、島内外問わず多くの人が容易にアクセスでき、教育材料としても活用が期待できる媒体として、姫島の地質遺産の3次元点群データベース化を検討することを目的とし、次の3つのことを実施しました。
(1) おおいた姫島ジオパークの情報収集とジオサイトの選定
(2) ジオサイト・地質遺産の三次元計測
(3) 三次元データの保存・表示方法の検討
これまでに収集した情報、ヒアリング、現地調査から、ジオサイト「大海のコンボリュートラミナ」を選定し、レーザー計測と3次元データの表示・共有方法の検討を行いました。課題もありましたが、その成果の一部はsketchfab(https://skfb.ly/oRMDt)で公開しています。今後も計測箇所を追加し、データを蓄積する予定です。
姫島を 「戦史」という切り口でとらえてみた。 今回の調査研究で周防灘、 瀬戸内海へと視野を広げてみると姫島を”俯瞰” することができ、 教科書にも 『姫島村史』 にも載っていない新たな史実が明らかになった。
姫島灯台は軍の要請で建設され、太平洋戦争中は敵艦、 敵機の監視任務も担っていた。 昭和18年には灯台近くに陸軍監視哨が設置されていたが空襲で焼失、太平洋戦争末期には灯台そのものも米軍機による攻撃を受け、 灯台の壁には剥離痕が今も残る。
昭和20年3月末にB-29が瀬戸内海西部、 周防灘海域に各種機雷を投下。 姫島周辺は機雷の海となった。 姫島周辺で少なくとも8隻の船舶が触雷して沈没した。さらに、姫島沖に米軍機が不時着したことにより、周辺を航行中の艦船が米軍機の攻撃を受けた。 終戦の年には特攻兵器 「回天」 を山口県の沿岸部から大分県日出町の「大神基地」に輸送する作戦があったが、姫島近くで輸送船が座礁した事例も明らかになった。 本土決戦の前の切迫した海の世界が垣間見えた。
詳細は当研究会の発行する書籍 『姫島戦史紀行』 をご覧ください(県立図書館、自治体図書館等に寄贈予定)。
姫島周辺の海は、海底からCO2が噴出している、世界的にも珍しい浅海域である。本研究では西浦地先のCO2噴出域と非噴出域で海洋環境の連続観測を行った。その結果、海底から噴出されたCO2が周辺の海洋環境に影響を及ぼす範囲は概ね半径10m以内であること、そしてその影響の多寡は潮汐と強く関係していることが初めて明らかとなった。 CO2噴出域は今後、人類社会がCO2排出量の大幅な削減に取り組まない限り生じる、 将来の海洋環境を先取りしていると考えられる。 そのため、噴出域における生物化学過程を詳細に調べることで、 海洋酸性化が海洋生態系に及ぼす影響を評価・予測する上で重要な知見を得られると期待される。さらに、これらのCO2噴出城は学術研究の対象としてだけでなく、ジオパークの観点からもスタディツアーやエコツーリズムのフィールド、ローカルアイデンティティの再構築の題材としても活用できると期待される。
姫島におけるアサギマダラの飛来と環境要因の関係について、 一般化線形モデル (GLM) を適用し、 調査地域の本種の数に影響する要因を評価した。その結果、本種の飛来は、朝と比較して正午に多い傾向にあり、 気温と風速の両方が本種の飛来数に有意性を示した。 本種と気温の関連には正の相関が示され、 気温が高いほど個体数が増加する。 風速が低い時 (<4m/s) に多く存在する傾向があったが、 風速の係数が有意でないことから本種への個体数増減の影響は限定的であると推測された。 今回の結果では、中継地における本種の複雑な動態に関する貴重な結果が示され、環境要因と観察された本種の関係性を定量化した。これらの知見は前回の報告をさらに発展させ、 気象条件や特に気温と風速が本種の分布と個体数を大きく形成していることが明らかになった。