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ジオパーク :調査研究助成

令和4年度おおいた姫島ジオパーク調査研究助成 研究成果

公開日:2023年4月24日

おおいた姫島ジオパークにおける暑さマップの作成

北 徹朗(武蔵野美術大学造形構想学部)

本研究では、 姫島の各ポイントにおける暑さ (蓄熱) および身体負荷データに基づき、暑熱環境下での休息環境整備の提言を行うことを目的とした。そして、それらをマッピングし、おおいた姫島ジオパークを快適・安全に楽しむための基礎資料を収集することを最終着地目標とした。
調査の結果、島内で特に高温環境になる場所は「フェリーターミナルとその周辺」(南浜公園など)や「姫島灯台」などであった。また、姫島観光において最も身体負荷が高いポイントは「千人堂・観音崎」だった。
島内には、飲料の自販機が全22台設置されていることを確認したが、設置場所に偏りがあるため、水分補給可能場所を示す「自販機マップ」をガイドマップに加筆することも提案したい。

 

姫島の更新統における淡水生珪藻化石の産出状況調査

納谷 友規(国立研究開発法人産業技術総合研究所地質情報研究部門)

姫島には、およそ200万年前~20万年前に形成された地層(地質時代との関係から更新統と呼ばれる) が分布する。これらの更新統は古いほうから、丸石鼻層、川尻礫層、唐戸層、姫島火山群に区分される。これらのうち、唐戸層は海成層を含むが、それ以外は陸域で形成された淡水成層と考えられている。本研究では、姫島に分布する更新統における淡水生珪藻化石の産出状況を明らかにすることを目的として、丸石鼻層、唐戸層、姫島火山群の大海層、迫火砕岩、城山火口湖堆積物、浮洲火砕丘 (?: この試料の帰属は不明) の地質調査を行い、珪藻化石分析用試料を採取した。予察的検鏡の結果、試料を採取したすべての地層から淡水生珪藻化石の産出が認められた。淡水生珪藻化石は浮遊性種 (プランクトン) を主体とすることが明らかになった。今後は、珪藻化石の分類学的検討を行い種構成の違いを明らかにするとともに、更新統の層序を再検討することで、群集変化が生じた時代を明らかにする予定である。

 

姫島周辺のCO2 湧出海域における海洋酸性化指標の空間分布把握

藤井 賢彦(北海道大学大学院地球環境科学研究院)・山田 誠(龍谷大学経済学部)

姫島沿岸の海底から気体が湧出していることは地元では昔から知られており、その主な気体成分はCO2であることが大沢・三島 (2017)によって明らかにされた。CO2湧出海域は今後、人間社会がCO2排出の大幅削減に取り組まない場合に懸念される海洋環境の変化を先取りしていると考えられる。そのため、姫島のCO2湧出海域を調査することは学術的にも社会的にも意義があると考え、灯台沖と西浦の2海域で海洋調査を実施した。その結果、CO2湧出海域では海洋酸性化の指標であるpHが、今後、人為起源CO2の排出を大幅に削減しないと今世紀末までに到達すると予測される水準まで低下していることがわかった。姫島沿岸のCO2湧出海域は比較的アクセスしやすい浅海域にあり、今後は学術研究の対象としてだけでなく、ジオパークの観点からも興味深い見どころとして位置づけられると考えられる。

 

姫島火山群のマグマ進化過程と大陸地殻の進化過程の地球化学的検討

平山 剛大・柴田 知之・芳川 雅子(広島大学大学院先進理工系科学研究科)

姫島火山群では、ザクロ石を含む流紋岩とザクロ石を含まないデイサイトから流紋岩が確認されている。本研究では姫島火山群の溶岩のSr-Nd-Pb同位体比組成の分析と主要元素組成・微量元素組成とSr-Nd-Pb同位体比組成を組み合わせたマグマ進化過程についてのモデル計算を行った。ザクロ石を含まないデイサイトから流紋岩は、幅広い206Pb/204Pb比と一定の87Sr/86Sr比を持ち、ザクロ石を含む流紋岩とは異なる地球化学的傾向を持つことが明らかになった。また、この起源については沈み込んだフィリピン海プレートの部分溶融によって生成され(アダカイト)、その後分別結晶作用によって形成されたと考えられる。ザクロ石を含む流紋岩は、87Sr/86Sr比が0.7048程度と比較的高い値を持ち、モデル計算からアダカイトと地殻物質の混合によって形成された可能性が指摘できる。

 

姫島ジオパークに飛来するアサギマダラの渡り~旅する蝶と定着した鳥類との関係

天野 孝保・Praeploy Kongsurakan(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科博士課程)

アサギマダラの個体数は、天候によって観察されたアサギマダラの数が大きく変化する。調査期間中の晴天日は平均観察数が最も多く、一部曇りや雨の日には、観察数が減少した。その後、天候が回復した2日間では観察されたアサギマダラの個体数が増加した。これらの結果は、温度、湿度、日照などの気象条件が蝶の個体群の分布や生息数に大きな影響を与えることを示した先行研究とも一致している。アサギマダラの観察数に影響を与える重要な要因として、時間帯が挙げられる。平均観察数が最も多かったのは晴天時の午前10時~12時で、最も少なかったのは雨天時の午前7時~8時である。アサギマダラは特定の時間帯に活発に活動する可能性があり、観察のタイミングが記録された蝶の数に影響を与える可能性があることが示唆された。
本研究は、アサギマダラの個体数と分布に影響を与える要因について貴重な知見を提供し、蝶の個体数を調査する際に天候と時間帯を考慮することの重要性を明らかにしていきたい。今後の展望として、アサギマダラとその捕食者の関係性についても研究を重ねていくことで、持続的な観光資源としての評価や保全について理解を深めていきたいと考えている。