海水による崖の浸食作用には2種類あります。波が直接打ち付けて削り取っていく浸食作用と、崖面にしみ込んだ海水が乾く際に塩の結晶ができることを繰り返すことで崩れやすくなっていく、とくに日当たりのよい南向きの崖面で生じやすい浸食作用です。崖の下の部分は干潮時と満潮時の間で2種類の浸食作用が同時に進みやすく、不安定になった上部が時々崩落することで「海食崖」が作られます。
「鷹の巣」は、「ひめしまブルーライン」が整備される以前に形成された「海食崖」です。海から眺めると、矢筈岳の斜面を切り取ったような崖の地形がよくわかります。
姫島を一周するジオクルーズで見ることができます。
崖の上部にボコボコと穴のあいたような地形「タフォニ」があります。タフォニの成因は、海水飛沫を取り込んだ岩石が乾燥することにより塩類を析出する際に、発生する結晶圧が岩石を破壊する「塩類風化作用」と考えられています。
「鷹の巣」にみられる地層は、約100万年前に堆積したもので、150~110万年前に噴火した国東半島の火山岩の礫を多く含んでいます。当時、国東半島との間は海ではなく、湖や河川などがある陸続きの環境でした。30万年前以降に活動した姫島の火山のマグマが下から上がってきた時、堆積した地層が高く持ち上げられました。
「鷹の巣」という地名は、古くからこの崖で鷹が営巣することに由来しており、現在も、毎年春に、猛禽類のハヤブサ(絶滅危惧Ⅱ類)が、崖の表面のくぼみを利用して営巣しています。